イスラーム教徒の人口増加で日本の宗教的緊張が高まるのか?
2023年5月31日にオンラインに掲載されたカトリックアジア連合(UCA)ニュースの記事が問題となっています。その記事は、ガンビア出身の男が日本の神社を破壊して「神はアッラーだけだ」と主張し、日本の地蔵を地面に投げつけて壊したという最近の事件を踏まえて、「イスラームの一神教的性質は、神道の多神教の概念と相容れない」と述べています。さらにUCAは、「このような調和のとれた共存は、イスラーム教徒の立場からは考えられない。神道の多神教の概念は、イスラームの一神教的な性質と相容れないからです」と主張しています。しかし、これは誤った見解であると同時に、不要な対立を煽る記事になっています。
このガンビア人一人の行動をもって、イスラームとすべてのイスラーム教徒が同じように神社の破壊を望んでいると煽るようなことはしてはいけません。もしイスラームとすべてのイスラーム教徒が神社を破壊することを信じているならば、日本中の神社が毎日破壊され続けることになるでしょう。しかし、現実にそうなっていないのはなぜでしょうか。理由はたくさんあります。ここでは3つのポイントについて言及します。
1. クルアーンは他宗教の信仰対象などの破壊を禁じています。クルアーン6章108節には、「あなた方(信者)は、かれら(多神教徒)がアッラーの他に呼ぶものを悪く言ってはいけません。さもないと、かれらは知識もなく、敵意をもってアッラーを悪く言うからです。このようにわれらは、それぞれの共同体に自分の行ないを、うわべだけ立派だと思わせたのです」 このように、人びとがアッラーの他に祈る神々を悪く言うことさえも禁じらています。だからそれらを破壊することはさらに禁じられているのです。
2. 預言者ムハンマド(アッラーの平安と祝福あれ)はそのような行為をしませんでした。ムハンマドは、アッラーの使者としての使命を受けた後13年間、メッカにて人びとが偶像を崇拝する場所を日常的に見ていました。しかし、彼は偶像を破壊することはしませんでした。なぜでしょうか?イスラームのことをよく知らない人たちの偶像を破壊すれば、当然、怒りの反応が来ることは容易にわかるからです。もちろん、彼はその後、メッカ解放後、カアバで360体の偶像を破壊しました。しかし、これはメッカの人びとがイスラームを受け入れた後のことで、ムスリムはもはや偶像を崇拝する必要がなくなったからです。
3. クルアーンは、異なる民族や部族の相互理解や、異なる宗教の共存を促進しています。クルアーンには、「人びとよ、われらはひとりの男とひとりの女からあなた方を創り、様々な種族と部族に分けました。それはあなた方が、互いに知り合いになるためです。アッラーの御元で最も貴い人は、あなた方の中、最も(アッラーを)意識する人です。確かにアッラーは、全知にして、あらゆることに通暁しています」(49章13節)と記されています。また「あなた方には、あなた方の宗教があり、わたしには、わたしの宗教があるのです」(109章6節)ともあります。
4ヶ月前に相互理解のため「日本の神道とイスラーム:知られざる関係を解読する」(英語字幕付き)という動画を作成しました。イスラームには唯一の創造主と多種多様な創造物という世界観があります。特に「ジン」と呼ばれる精霊・妖霊・悪霊についての考え方は、日本の神道にも似た側面があることをご存知でしょうか。動画をご参照ください。
Religious tensions in Japan as Muslim population grows??
A Union of Catholic Asian (UCA) News article published online on 31st May 2023 raises the issue. It said, “the monotheistic nature of Islam is incompatible with the concept of polytheism in Shinto religion” based on the recent incident that a man from Gambia vandalized a Japanese shrine and claiming that God is only Allah and threw the Japanese Jizo statues to the ground and broke them.
The news also said that “this harmonious coexistence becomes inconceivable from the perspective of a Muslim. The concept of polytheism in Shinto is incompatible with the monotheistic nature of Islam.” This is however misleading.
We should not take the actions of this one Gambian man to incite Islam and all Muslims to think that they all want to destroy the Shinto shrines in the same way. No!
1. The Qur’an prohibited that action. Qur’an 6:108 says, “and do not abuse those whom they call upon besides Allah, lest exceeding the limits they should abuse Allah out of ignorance. As it is forbidden to speak ill of the deities to whom the people pray besides Allah, and it is even more forbidden to destroy them.
2. The Prophet Muhammad (peace and blessing be upon him) did not do that. For 13 years after Muhammad received the mission as Allah’s messenger, he saw places where the people worshipped many idols on a daily basis in Makka. Yet he did not destroy the idols. Why? Because if he destroys idols when the people don’t know much about Islam, they will be offended. We can easily understand such a situation. In fact, he later destroyed 360 idols at the Kaaba in Makka. But this was only after the people of Makka accepted Islam because Muslims no longer need to worship idols.
3. The Qur’an promotes mutual understanding of different nation and tribes and also coexistence of different religions. The Qur’an says, “O mankind, indeed We have created you from male and female and made you peoples and tribes that you may know one another. Indeed, the most noble of you in the sight of Allah is the most righteous of you. Indeed, Allah is Knowing and Acquainted.” (49:13). It also says, “For you is your religion, and for me is my religion.” (109:6).
In fact I made a video 4 months ago called “Japanese Shintoism and Islam: Decoding Unknown Relationship” [English Subtitles] for mutual understanding.
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