クルアーンは人間の取り扱い説明書で、人間が正しく人間を取り扱うためのマニュアルとなっています。その中では自分の命をどのように釣り扱うべきか記されています。「あなた方自身を殺してはいけません。」(4:29)つまり自殺の禁止です。アナス・ビン・マーリクの伝承によると、預言者ムハンマド(彼に祝福と平安を)は言いました。「あなた方は誰も、自分を苦しめる災難のために死を願ってはならない。しかし、もし何かをどうしてもしなければならないのであれば、彼にこう言わせなさい。アッラーよ、私にとって生が良いものである限り、私を生かしておいてください、また、私にとって死が良いものであるならば、私を死なせてください。」(サヒーフ・アル・ブハーリー5671、サヒーフ・ムスリム2680)。私たちはどのように苦しい境遇でも死を願うことも禁止されています。ただし私たちに命を与えるのも奪うのもアッラーの御心次第ということも事実。これは自ら死を願うという意味ではなく、アッラーがそう決めたのなら、それは起こるべくして起こる、防ぎようのないことだという意味です。健康問題、経済的困窮や破綻、人間関係のもつれ、いじめや家庭内暴力など自殺の原因は様々ですが、イスラームではこれらの苦難や逆境をポジティブに捉えます。人間が災害や病気による苦痛によって、アッラーはその人の罪を消すという預言者の伝承もあります。サヒーフ・アル・ブハーリー(第 7 巻:第 70 巻:第 544 番)に次のように記されています。アーイシャが伝えたところによると、アッラーの使徒ムハンマドは言いました。「ムスリムに災難が降りかかることはない。なぜならたとえ棘があなた方の一人を刺したとしても、それはあなた方の罪の一部を償うものであるからだ。」同じく第7巻:第70巻:第548番では、アブー・フライラによると、アッラーの使徒は言いました。「アッラーが誰かに良いことをしたいと願うと、かれは試練でその人を苦しめる。」だからムスリムは良い時も悪い時もアルハムドゥリッラー(アッラーへの感謝)の精神でいることの大切さが教えられているのです。というのは、「信者に起こる全てのことは、信者の益となるように起こるからである。また、悪いことが起きても、その時は忍耐して、アッラーはその忍耐に報いる」(アル・ブハーリー、ムスリム)からです。事実、ムスリム諸国における自殺の数が他国に比べて極端に低いことは実証されています。日本国内に住む海外出身のムスリムに聞いてみても、どんなに状況が苦しくても自殺をするという選択肢を思いつくことすらないと言います。それは幼い時から彼らの周りには自殺をする人がいないからです。