
10月12日、インドネシア・ブラウィジャヤ大学獣医学部講師陣による「ハラール屠畜と食品の安全性」に関するセミナーを初開催しました。
ヌリナ・ティティサリ獣医師(Dr. Nurina Titisari, drh., M.Sc., Ph.D.)
所属:インドネシア・ブラウィジャヤ大学 獣医学部(動物生理学分野)
テーマ:ハラール屠畜の必須条件:How to Perform Halal Slaughter
- ハラール屠畜のイスラーム法上の要件
- 正しい屠畜方法と切開の手順
- 屠畜時の唱名(タスミヤ)
- スタニング(気絶処理)の位置づけ
- 動物が屠畜時に生存していることの重要性
シティ・クルニアワティ獣医師(Dr. drh. Siti Kurniawati, M.Ked.Trop.)
所属:インドネシア・ブラウィジャヤ大学 獣医学部
テーマ:ハラール屠畜のタイイブ要件:ハラール屠畜を獣医学・動物福祉の視点から考える(Part 1)
- タイイブ(Tayyib):清浄で良質、安全で、健全な食品であること。
- 動物福祉:屠畜前、屠畜中、屠畜後の苦痛を可能な限り軽減する。
- 五つの自由(Five Freedoms):動物福祉を評価するための基本的な枠組み。
| 五つの自由 | 屠畜における具体例 |
|---|---|
| 飢えと渇きからの自由 | 適切な給餌・給水管理 |
| 不快からの自由 | 適切な環境、温度、休息場所 |
| 痛み・傷害・疾病からの自由 | 負傷の防止、健康状態の確認 |
| 正常な行動を発現する自由 | 動物の種類に応じた適切な取り扱い |
| 恐怖と苦悩からの自由 | 乱暴な扱い、過度な拘束、不要なストレスの回避 |
動物のストレスと健康状態をどのように認識するか?
- 行動:逃避、暴れる、過度の鳴き声など
- 呼吸:呼吸数の増加、異常な呼吸
- 身体状態:負傷、跛行、疲労
- 生理的指標:心拍数、体温、血中コルチゾールなど
- 食肉の品質:肉色、pH、保水性など
重要なのは、動物のストレスを直接観察する指標と、屠畜後の肉質から推測する指標を区別することです。
アジェン・エリカ・プリハストゥティ・ハスキト獣医師(Ajeng Erika Prihastuti Haskito, drh., M.Si.)
所属: インドネシア・ブラウィジャヤ大学 獣医学部
テーマ:ハラール屠畜のタイイブ要件:ハラール屠畜を獣医学・動物福祉の視点から考える(Part 2)
① 食品安全(Food Safety)
- 細菌の増殖を防ぎ、食中毒リスクを低減する。
- 屠畜、解体、加工、保管、輸送における衛生管理を徹底する。
- 温度管理と微生物汚染の防止を行なう。
② 栄養と健康(Nutrition and Health)
- タンパク質、必須アミノ酸、ビタミン、ミネラルなどの供給源。
- 適切な処理・保管によって食品の品質を維持する。
③ 食肉の健全性と品質(Meat Wholesomeness and Quality)
食肉は安全性、栄養価、衛生状態、肉質などの観点から評価する必要があります。
| 肉質の異常 | 特徴 | 主な関連要因 |
|---|---|---|
| PSE(Pale, Soft, Exudative) | 淡色、軟らかい、ドリップが多い | 屠畜前後の急速なpH低下と高い筋肉温度など。特に豚肉で知られる。 |
| DFD(Dark, Firm, Dry) | 暗色、硬い、表面が比較的乾いて見える | 屠畜前の長時間のストレスや疲労などによる筋肉グリコーゲンの減少、最終pHの上昇など。 |
意見交換:高付加価値ハラール認証獣肉の開発方法
日本でハラール肉を開発する場合、単にイスラームの規定に従って屠畜するだけでなく、ハラールの信頼性、肉質、衛生管理、トレーサビリティ、商品としての差別化を組み合わせることで、付加価値を高められます。特に日本の畜産業には、和牛の品質管理、衛生技術、熟成技術などの強みがあります。これらをハラールの要件と組み合わせることが、商品開発の方向性として考えられます。日本でハラール肉を開発する場合、主に以下の確認すべき点があります。
- 牛・羊・鶏など、どの動物を対象にするか。
- スタニング(気絶処理)を行う場合、どの方式を使用するか。
- 輸出先の国(認証機関)が、その施設・認証・処理方式を認めているか。
屠畜方法による差別化
イスラームの規定に適合する屠畜方法を採用し、その工程を消費者に説明できるようにすることが、ハラール認証肉の基本です。
| 項目 | 開発方法 | 付加価値 |
| 屠畜方法 | イスラームの規定に適合する屠畜 | ハラールの信頼性 |
| 屠畜担当者(ムスリム限定) | 必要な宗教上・技術上の要件を満たす担当者を配置 | 宗教的な適合性の確保 |
| 屠畜前の処置 | 意識のある状態での屠畜を原則とし、気絶処理を行う場合は認証基準への適合性を確認 | 市場ごとの要件への対応 |
| 放血工程(ハラール性の要) | 適切な切開と放血工程を管理 | 屠畜工程の品質管理 |
| 衛生管理 | 食品衛生基準に従い、汚染や微生物増殖を抑制 | 食品安全性の向上 |
| 工程の記録 | 屠畜日時、担当者、個体識別番号などを記録 | トレーサビリティの確保 |
| ハラール認証 | 対象市場で認められる認証基準に対応 | 輸出・販売先の拡大 |
- ガススタニング(ガスによる気絶処理): イスラーム諸国のハラール屠畜基準では認められていない。
- キャプティブボルト式スタニング(ボルト式気絶処理): インドネシアとパキスタンでは認められていない。他の国における要件については、さらなる調査が必要。
- 電気スタニング(電気による気絶処理): パキスタンでは認められていない。他の国では、特定の条件や要件を満たす場合に認められることがある。


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