11月1日、福井市のフェニックスプラザに約80名が集合して、ムスリムと「知り合いになる」国際交流会を初開催しました。福井マスジドが初めて開催した日本人との国際交流会に参加し、当センター理事長が基調講演を行いました。冒頭では、今回の交流会の開催を祝福するとともに、準備に尽力された福井マスジドのみなさまに感謝を述べました。講演では、まずイスラームに対する誤解を解くため、その基本的な教えを紹介しました。イスラームはテロや暴力を教える宗教ではなく、人間の命と尊厳を重んじる宗教です。クルアーン5章32節は罪のない人間の命を奪うことの重大さを説き、4章29節は自殺を禁じ、17章32節は姦淫(レイプ・強姦を含む性犯罪につながる行為)を禁じていることを説明しました。

特に強調したのは、クルアーン49章13節に記されている「لِتَعَارَفُوا(リタアーラフー)」という言葉です。「互いに知り合うために」という意味であり、単に出会うだけでなく、互いを認識し、理解し、関係を築いていくことを意味します。人類は皆、祖アーダムの子孫であり、一つの家族です。民族や国籍の違いは、争う理由ではなく、互いを理解するためのきっかけであると説明しました。また、ムスリムに対する恐怖や偏見も、実際に会い、交流することで解消される可能性があることを伝えました。

続いて、国際情勢と日本の将来について考察しました。米中間の大国間競争や中東情勢の変化を踏まえ、日本はアメリカとの同盟を維持しながら、中国との対話を続け、さらに世界約21億人のイスラーム世界との戦略的パートナーシップを構築する必要性を指摘しました。特に、日本の経済安全保障におけるエネルギー、鉱物資源、食料、人材の重要性を取り上げました。日本はエネルギーや食料の多くを海外に依存しており、例えば、原油では中東95%依存、ニッケルマットではインドネシア80%依存となっています。これらは自動車産業、電池、製造業など、日本の基幹産業を支えています。また、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」(この「海の道」は数多くのムスリム諸国を通る)や、日本とバングラデシュの経済連携協定(EPA)にも触れ、イスラーム諸国との協力が「日本国民の生命線」を守るために重要な意味を持つことを説明しました。

さらに、日本国内のムスリム人口の変化についても紹介しました。国内のムスリム人口は、かつての約3万人から現在では約51万人に増加したと推計されています。その背景には、日本の人口減少と外国人労働者の増加があります。介護、看護、農業、漁業、建設業など、さまざまな分野でムスリムが日本社会を支える存在となっており、今後ますます国際協力と共生が求められることを指摘しました。

最後に、講演者自身の約30年間にわたるムスリムとしての経験と、クルアーンとの出会いを紹介し、イスラームの基本的な信仰について説明しました。すなわち、唯一の創造主アッラーを信じ、クルアーンと預言者ムハンマドの教えに従い、善を行ない、悪を避け、来世に備えて生きることです。イスラームは、人間の良心と善なる心を呼び起こす教えであると締めくくりました。

質問1:千葉イスラーム文化センター(CICC)はどのような役割を果たしていますか。

CICCは、ムスリムにとって単に礼拝をする場所ではありません。日本で安心して生活するためのコミュニティであり、困ったときに相談できる国際協力の場所です。例えば、生活習慣や食事、子どもの教育、結婚、葬儀、日本社会との関わり方など、さまざまな相談があります。特に外国人ムスリムにとっては、母国を離れて生活する中で、同じ信仰を持つ人びととつながり、精神的な安心感を得られることが重要です。一方、日本人にとっても、イスラームについて学び、ムスリムと直接国際交流できる場所です。つまり、CICCはムスリムのための施設であると同時に、日本社会とムスリム社会をつなぐ交流拠点でもあります。

質問2:設立から現在まで、活動内容はどのように変化してきましたか。

NPO法人設立以前は、千葉大学の留学生を中心とした礼拝や交流が活動の中心でした。しかし、時間の経過とともに、留学生だけでなく、千葉県内で働く外国人ムスリム、日本人ムスリム、その家族など、さまざまな人びとが集まるようになりました。それに伴い、活動も広がりました。現在は、礼拝に加えて、ムスリム児童教室、一般市民向けのイスラーム理解講座、国際交流会、マスジド見学会、日本語によるクルアーンの紹介などを行なっています。特に重要なのは、日本人に対するイスラーム理解教育です。外国人ムスリムが日本で生活するだけでなく、日本人自身がイスラームを正しく理解できる環境をつくる必要があると考えたからです。一方、活動が拡大するにつれて、国籍や文化、言語、宗教理解の違いを調整する難しさも生まれています。また、施設の維持管理や運営資金、人材の確保も課題です。現在のCICCは、単なる留学生の交流団体から、地域社会に根ざした多文化共生の拠点へと発展してきたと考えています。

質問4:同じムスリムでも、出身国や宗派によって戒律や生活習慣に違いはありますか。

もちろん違いはあります。ただし、まず理解していただきたいのは、イスラームという宗教と、それぞれの国の文化や慣習は同一ではないということです。例えば、インドネシア、バングラデシュ、パキスタン、アラブ諸国では、服装、食事、結婚式、家族関係などに文化的な違いがあります。同じイスラームを信仰していても、宗教実践の細かな部分について異なる見解を持つこともあります。しかし、唯一の創造主アッラーへの信仰、礼拝、断食、定めの施し、巡礼といったイスラームの基本原則は共通しています。CICCは特定の国の文化を基準にしているわけではありません。また、特定の民族や国家の宗教組織になることもめざしていません。基本的にはクルアーンと預言者ムハンマドのスンナを重視し、イスラームの基本的な教えを大切にしています。そのうえで、正当な学問的見解の違いについては尊重する姿勢を取っています。

質問5:外国人ムスリムから、地域住民との関わりの中で困ったことを聞いたことはありますか。

よく聞くのは、食事、礼拝、ラマダーン、服装など、宗教上の習慣に関することです。例えば、日本の職場や学校では、昼食を同僚や友人と一緒に食べることがありますが、ハラールに対応した食事を見つけるのが難しい場合があります。また、礼拝のための時間や場所を確保することに苦労する人もいます。ラマダーン中には、日中の飲食を控えるため、周囲から体調を心配されることもあります。ただし、こうした問題の多くは、必ずしも悪意から生じているわけではありません。単にイスラームの習慣を知らないために起きていることも多いのです。大切なのは、ムスリム側も日本の文化や社会の仕組みを理解し、地域社会に対して丁寧に説明することです。そして、地域の方々にも少しずつ理解を深めていただきたいと思っています。

質問6:見学や問い合わせに来る日本人からよく受ける質問や誤解は何ですか。

よくあるのは、「イスラームはテロと関係がある宗教なのですか」「豚肉やお酒を口にしないのはなぜですか」「女性は自由がないのですか」といった質問です。また、イスラームをアラブ人の宗教だと思っている方もいます。しかし、ムスリムの大多数はアラブ人ではありません。インドネシアをはじめ、世界中のさまざまな民族がイスラームを信仰しています。私たちが大切にしているのは、質問を否定したり、相手を批判したりするのではなく、まず相手の疑問を受け止めることです。そして、特定の国の文化や一部の人びとの行動と、イスラーム本来の教えを区別して説明するようにしています。知識のないことは恥ずかしいことではありません。知らないことを質問し、互いに学ぶことが国際協力の第一歩だと考えています。

質問7:地域交流を通じて、イスラームへの誤解や偏見が解消された経験はありますか。

あります。特に印象的なのは、ムスリムと直接交流していただいた方々の反応です。テレビやインターネットの情報だけでイスラームを知っていた方が、実際にムスリムと会話し、一緒に食事をし、礼拝の様子を見学することで、印象が大きく変わることがあります。最初は緊張した様子だった方が、帰る頃には「ムスリムの方々も私たちと同じように家族を大切にし、平和に暮らしたいと考えているのですね」と話してくださることもあります。私は、イスラームを理解していただくためには、説明だけでなく、実際に交流することが非常に重要だと考えています。人は知らないものに対して不安を感じます。しかし、知り合い、話し、一緒に時間を過ごすことで、その不安は少しずつ解消されていきます。

質問8:地域交流におけるイスラームへの対応や反応は以前と変化していますか。

以前と比較すると、イスラームやムスリムに対する社会的な認知度は高まっていると感じます。ハラール食品を取り扱う飲食店が増えたり、礼拝スペースを設ける商業施設が出てきたり、学校や企業でもムスリムへの対応を考える機会が増えたりしています。また、地域のイベントや大学で、ムスリムと日本人が一緒に交流する機会も増えています。ただし、認知度が高まることと、正しく理解されることは別です。イスラームについて名前は知っていても、実際の教えやムスリムの日常生活については、まだ十分に知られていない部分があります。そのため、私たちは一時的なイベントだけではなく、継続的な交流を大切にしています。

質問9:イスラームでは信仰放棄が認められないという情報があります。日本の信仰の自由と、宗教上の戒律のどちらが優先されますか。

まず、イスラームの基本原則として、クルアーンには「宗教には強制があってはならない」(第2章256節)と明記されています。信仰とは、本人の自由な意思と確信に基づくものであり、他人が強制できるものではありません。一方、イスラーム法学の歴史において、信仰を捨てる行為について厳しい法的議論が行なわれてきたことも事実です。ただし、その議論には当時の政治的・社会的状況や、国家への反逆などの問題が関係しており、現代の学者の間でも解釈や適用について議論があります。少なくとも、日本においては憲法第20条によって信教の自由が保障されています。宗教を信じる自由だけでなく、信じない自由、宗教を変更する自由も保障されています。私たちムスリムは、自分自身の信仰を大切にしながら、日本の法律を遵守して生活しなければなりません。宗教上の信念を持つことと、他人にそれを強制することは全く別の問題です。

質問10:男尊女卑的な戒律やハラールの規定など、日本の文化・慣習と異なる部分をどのように考えていますか。

まず、イスラームの教えと、特定の国や地域に存在する伝統的な男性優位の慣習を区別する必要があります。イスラームでは、男女は神の前において等しく尊厳を持つ存在です。クルアーンでは、男女ともに信仰と善行において評価されることが明確に示されています。もちろん、男女の役割や家族に関する規定には、現代日本の一般的な考え方と異なる部分もあります。しかし、それを直ちに女性差別と理解するのは適切ではありません。実際の運用や文化的慣習についても、慎重に区別して考える必要があります。また、ハラールについても、豚肉やアルコールを避けること、食材や製造工程を確認することなど、日本の一般的な食生活とは異なる部分があります。不便を感じることはありますが、それは日本社会が悪いという意味ではありません。異なる宗教的背景を持つ人々が一緒に暮らす以上、互いに理解し、可能な範囲で工夫することが大切です。私たちも日本社会の一員として、周囲に過度な負担を求めるのではなく、対話を通じて解決策を見つけていきたいと考えています。

質問11:周囲の理解や偏見によって、自分の行動を変えた経験はありますか。

ムスリムの中には、周囲の目を気にして、礼拝や服装、食事などについて自分の宗教的習慣を説明することをためらう人もいます。例えば、職場で礼拝をすることや、会食で食べられないものがあることを説明しづらいと感じる人もいます。しかし、私は、宗教的な実践を隠すことが解決策だとは考えていません。もちろん、周囲への配慮は必要ですが、自分の信仰について誠実に説明することも大切です。同時に、ムスリム側にも、相手に理解を求めるだけでなく、日本の社会や文化を尊重する姿勢が必要です。お互いに歩み寄ることが、共生社会の基本だと思います。

質問12:今後の日本でのイスラーム布教について、政治的・経済的な影響力を伸ばしたいのか、日本人の信者を増やしたいのか、どのように考えていますか。

CICCはNPO法人として、政治的・経済的な影響力の拡大や、特定の宗教への改宗者を増やすことを目的としているわけではありません。私たちが目指しているのは、イスラームを一つの切り口として、日本と世界の人びとをつなぎ、国際交流、国際協力、異文化理解を促進することです。現在、日本では外国人住民が増加し、異なる宗教や文化を持つ人びとが共に暮らす社会になっています。その中で、ムスリムと日本人が互いを理解し、協力できる関係を築くことは、これからますます重要になると考えています。CICCでは、教育だけでなく、地域交流、大学との連携、国際交流事業、日本語によるクルアーンの説明など、幅広い活動を通じて社会に貢献していきたいと考えています。もちろん、イスラームの教えを正しく伝えることは、強制や勧誘を目的とするものではなく、正しい知識を提供し、一人ひとりが自ら考え、理解する機会をつくることです。

質問13:日本のムスリムは日本文化に適応するべきでしょうか。それとも日本社会がムスリム文化を尊重するべきでしょうか。埋葬方法についても教えてください。

私は、どちらか一方だけが変わるべきだとは考えていません。必要なのは、相互尊重と国際協力です。外国人ムスリムは、日本で生活する以上、日本の法律や社会のルールを理解し、地域社会の一員として責任を果たす必要があります。一方、日本社会にも、異なる宗教や文化を持つ人びとが暮らしているという現実を理解し、合理的な範囲で対応していただきたいと思います。その一例が土葬の問題です。イスラームでは、原則として火葬ではなく土葬によって埋葬します。これは単なる外国の文化や個人的な好みではなく、宗教的な実践に関わる問題です。日本では火葬が一般的であり、土地の確保、衛生管理、地域住民の理解など、さまざまな課題があることも理解しています。しかし、宗教的な理由から土葬を必要とする人びとが日本で生活している以上、法律や衛生基準を守りながら、適切な埋葬の選択肢を確保するための議論が必要だと思います。多文化共生とは、少数派に多数派への完全な同化を求めることではありません。社会の基本的なルールを守りながら、互いの尊厳と信仰の自由を尊重することだと考えています。

質問14:地域の大学生に期待することや、一緒に取り組みたいことはありますか。

大学生の皆さんには、まず、実際にムスリムと会って話をしていただきたいと思います。イスラームについて本やインターネットで学ぶことも大切ですが、実際に異なる文化や価値観を持つ人々と交流することによって、初めて気づくこともたくさんあります。CICCとしては、大学生との共同研究、マスジド見学会、国際交流イベント、ハラールやイスラーム文化に関する勉強会など、さまざまな活動を一緒に進めていきたいと考えています。特に、大学生には、ムスリムを研究対象として見るだけではなく、一緒に地域社会をつくる仲間として関わっていただきたいです。若い世代が異文化を理解する経験は、将来の日本社会にとっても大きな財産になると思います。

質問15:CICCが考える異文化理解・多文化共生のゴールとは何でしょうか。

私たちがめざしているのは、単にイスラームという宗教が日本で認知されることでも、イスラーム文化が日本に広がることだけでもありません。日本人も外国人も、ムスリムも非ムスリムも、お互いの違いを理解し、尊重しながら、安心して生活できる社会をつくることです。私は、クルアーン第49章13節の教えを非常に大切にしています。そこには、アッラーが人びとを一つの男性と女性から創造し、民族や部族に分けたのは、互いに知り合うためであると記されています。つまり、人間の違いは、対立や優劣を生み出すためではなく、互いを知り、理解するためにあるということです。日本はこれから、人口減少や労働力不足などを背景に、さらに多くの外国人と共に暮らす社会になっていくでしょう。その中で、宗教や文化の違いを単なる問題として捉えるのではなく、社会を豊かにする可能性として考えることが重要です。CICCは、国際交流を通じて日本人と世界のムスリムをつなぎ、日本における多文化共生社会の実現に貢献していきたいと考えています。私たちの最終的な目標は、ムスリムが特別扱いされる社会ではなく、ムスリムであることを理由に不利益を受けることもなく、誰もが互いを尊重しながら暮らせる社会です。

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