❶2026年9月15日:実業家イッポ・サントサ氏との出会い
「Ingin sukses, sukseskan orang lain」「成功したいなら、他人を成功させなさい」
2026年9月15日、イッポ・サントサ(Ippho Santosa)氏と出会う機会がありました。彼はインドネシアで幅広く活動する有名な実業家、著述家、講演家です。自己啓発やビジネス教育だけではなく、イスラームの価値観を「Rezeki(リズキ:恵み)」というテーマを通して人生や経済活動と結びつけて発信しています。彼のインスタグラムのフォローワー数は100万人を超えています。彼はマレーシアの大学でマーケティングおよび国際ビジネスを専攻し、学士号(S1)を取得しました。
Rezeki(リズキ)とは、イスラームにおける「アッラーから与えられる糧・恵み・恩恵」を意味します。日本人的には現世のご利益(ごりやく)と言えるでしょう。単に「お金」や「収入」だけではありません。たとえば、お金・仕事・財産、食べ物・生活に必要なもの、家族・友人・良い人との出会い、知識・知恵、健康、機会・才能・成功、イスラームとの出会い、善行をする機会などです。
現在イッポ・サントサ氏はBP Group(2025年の売上高は少なくとも50億円以上)の創設者として、British Propolisを中心に健康・栄養・スキンケア関連の商品を展開し、リテール販売とパートナー制度を組み合わせた事業を行っています。また、これまでに多数の著書を出版し、講演や教育活動を通じて、起業や資産形成だけでなく、人間関係、家族、信仰、社会貢献についても語っています。
彼の思想を理解するうえで特に重要なのが、『7 Keajaiban Rezeki(7つの恵みの奇跡)』と『Magnet Rezeki(恵みを引き寄せる磁石)』という2冊の著書です。この2冊を続けて読むと、「リズキを得るための考え方」から「得たリズキを経済的な力に変える方法」へと、考え方が発展していることが分かります。
『7 Keajaiban Rezeki』:自分自身を変える
『7 Keajaiban Rezeki(7つの恵みの奇跡)』の中心にあるのは、「人生を変え、リズキを広げるためには、まず自分自身の考え方を変える必要がある」という考え方です。ここでいうリズキは、単なるお金を意味していません。仕事、収入、健康、人との出会い、家族、良い人間関係、新しい機会、知識など、人生に与えられるさまざまな恵みを含む広い概念として捉えています。
「7 Keajaiban Rezeki(7つの恵みの奇跡)」の考え方を、まとめると次のようになります。
- Sidik Jari Kemenangan(勝利の指紋)
→ 人にはそれぞれ固有の才能・強みがある。それを見つけて活かす。 - Sepasang Bidadari(2人の天使)
→ 成功には、自分を支えてくれる重要な人びと、特に親や配偶者との関係が大切。 - Golongan Kanan(右側のグループ)
→ 前向きな考え方を持ち、善い人・成功を目指す人びとと付き合う。 - Simpul Perdagangan(商売の結び目)
→ 人とのつながり・ネットワークを広げ、価値を交換することでリズキの機会を増やす。 - Perisai Langit(天の盾)
→ 礼拝、信仰、善行、親孝行などを通して、アッラーからの守りと祝福を求める。 - Pembeda Abadi(永続的な差別化)
→ 他人と同じことをするのではなく、自分独自の価値を作る。 - Pelangi Langit(天の虹)
→ 努力だけでなく、礼拝・信仰・善行・感謝を組み合わせ、アッラーの恵みを信頼する。
そのため、リズキを増やしたいのであれば、単純に労働時間を増やすだけでは十分ではありません。どのように物事を見るのか、どのような人間関係を築くのか、どのように家族や社会と関わるのか、そしてアッラーとの関係をどのように強くするのかが重要になります。
特に、人との関係を大切にすること、両親を尊重すること、他者を助けることなどが重要なテーマになっています。つまり、「自分の利益だけを追求する」のではなく、人との良い関係を築き、周囲に価値を与えることが、結果として自分自身の人生にも良い影響を与えるという考え方です。
また、右脳(otak kanan)を活用するという独自の考え方も特徴です。既存の常識だけに縛られるのではなく、創造性や直感を活用し、新しい可能性を見つけることを重視しています。
この考え方を一言でまとめるなら、「リズキを求める前に、まずリズキを受け取れる自分になる」ということです。
『Magnet Rezeki』:リズキを資産に変える
『Magnet Rezeki』では、さらに具体的な経済活動へとテーマが発展します。ここでは、収入を得ることだけを目標にするのではなく、得たお金をどのように管理し、どのように資産へ変えていくかが重要になります。例えば、収入と支出の管理、負債の考え方、投資、不動産、金、投資信託、ビジネス、受動的収入など、さまざまな資産形成の方法が扱われています。
ここで重要なのは、「働いてお金を得る」だけではなく、「得たお金に働いてもらう」という発想です。つまり、労働によって得られる収入だけに依存するのではなく、事業や投資、不動産などの資産を形成し、そこから継続的な収益を生み出す仕組みを作ることです。
この意味で、『7 Keajaiban Rezeki』が「人間の内面・考え方」を中心としているのに対して、『Magnet Rezeki』は「お金・資産・経済的仕組み」に重点を置いています。
イッポ・サントサ氏の「考え方」と「お金・資産」の考え方を、実際の行動が見える形にすると、次のように具体化できます。
① 考え方を変える
「お金は単に使うものではなく、将来の自由や人助けを生み出すための道具」と考えます。「収入を増やすには、まず自分の知識・技術・人間関係など、人に提供できる価値を高めよう」と考えます。
② 行動を変える
仕事の後に資格や専門知識を学び、副業にも挑戦します。例えば、営業の経験がある人なら、オンラインで営業研修をしたり、企業向けのコンサルティングを始めたりします。
③ 収入を増やす
本業の給与が月30万円、副業が月5万円になれば、月収は35万円になります。さらにスキルを高め、副業を10万円、20万円と成長させることをめざします。
④ お金を管理する
収入が増えても生活費を同じ割合で増やさないようにします。例えば月5万円の副業収入が増えたら、すべて消費するのではなく、2万円 → 貯蓄、2万円 → 投資・資産形成、1万円 → 学習・自己投資というように、お金の行き先を決めます。
⑤ 資産を形成する
貯めたお金を、長期的な資産形成に回します。例えば、余裕資金を分散して投資したり、事業に再投資したりします。重要なのは、「働いて得たお金」を「将来価値を生み出す資産」に変えていくことです。
さらに重要なのは「他人を成功させる」こと。イッポ・サントサ氏の特徴は「自分だけの成功」で終わらないことです。彼の思想をさらに特徴づけているのが、他者の成功を重視する考え方です。彼は「Ingin sukses, sukseskan orang lain」、つまり「成功したいなら、他人を成功させなさい」という考え方を示しています。一般的な自己啓発では、「自分が成功するにはどうすればよいか」が中心になりがちです。しかしイッポ・サントサ氏の場合は、自分が得た知識や経験を他人に伝え、その人の成長や成功を助けることによって、さらに大きな価値を生み出そうとします。
リズキは「循環」させるもの
さらにイスラームの観点から見ると、リズキという概念は非常に興味深いものです。人が得たお金や知識、時間、人脈、経験は、自分だけのために使うこともできます。しかし、それを他者のために使えば、さらに多くの人に価値を届けることができます。例えば、10人に知識を教え、その10人がさらに10人を助ければ、最初の一人が持っていた知識が100人へ広がる可能性があります。同じように、資金も自分だけで消費するのではなく、事業、教育、雇用、慈善、ワクフ(寄進)などに再投入することで、より大きな社会的価値を生み出すことができます。
クルアーンは人類に次のように伝えます。
إِنْ أَحْسَنتُمْ أَحْسَنتُمْ لِأَنفُسِكُمْ 「あなたがたが善を行なうなら、あなたがた自身のために善を行なうのです」(クルアーン 17:7)
هَلْ جَزَاءُ الْإِحْسَانِ إِلَّا الْإِحْسَانُ 「善いことへの報いは、善いことでなくて何であろう」(クルアーン55:60)
クルアーンの言葉は現代社会に生きる私たちにも深い知恵を与えるのです。ある日本人はクルアーンを知ることを重荷のように感じて、最初から知らない方がいいと言いました。これはまさに恵みから遠ざかる考え方です。このような反応について、創造主アッラーは「でも、かれらの多くは理解しないのです」(クルアーン29:63)と言います。発想を逆転が必要です。


❷2026年9月18日:実業家デニ・ダルマワン氏との出会い
2026年9月18日、インドネシアの実業家デニ・ダルマワン(Deni Darmawan)氏と出会いました。彼はMadinah Group Indonesiaの創設者および現役CEOとして、通信、デジタルサービス、スマートフォン販売・修理、経営管理システムなど、複数の事業を展開している人物です。同時に、イスラームの価値観を経営や社会活動に取り入れ、教育、マスジド建設、困窮者支援、ムスリム起業家の育成などにも取り組んでいます。その歩みをたどると、「小さな商売から始め、実行と管理を積み重ねることで事業を成長させ、最終的には社会への貢献につなげる」という一貫した考え方が見えてきます。
デニ氏は1987年7月21日、ジャカルタに生まれました。起業の原点は、まだ高校生だった2005年にまでさかのぼります。当時、高校1年生だったデニ氏は、ハーブ、香水、石鹸、洗剤などの商品を教師や主婦などのネットワークを通じて販売し、学費などを補おうとしたそうです。最初から大きな資本を持っていたわけではありません。身近な人間関係と、自分で商品を販売するという小さな一歩から事業を始めたのです。
デニ氏は2012年1月28日、ジャカルタでMadinah Groupの前身となる事業を設立しました。当初はDeny Cellという小規模な通信関連事業で、いわば「2メートルほどの小さなショーケース」から始まったとされています。そこから電話やデータ通信関連の販売、スマートフォン・アクセサリーの小売、スマートフォン修理、デジタルサービスへと事業領域を広げ、2017年にはPT Madinah Multimedia Telekomunikasiへと発展しました。
デニ氏の特徴は、一つの商売を大きくするだけではなく、そこで得た経験や仕組みを次の事業へ展開していく点にあります。現在のMadinah Groupは、通信・デジタル事業だけではなく、スマートフォン小売、修理サービス、経営管理システム、ソフトウェアなど、複数の分野にまたがる事業を展開しています。会社側の公開情報では、事業規模について複数の支店と数百人規模の従業員を抱える企業グループへ成長したと説明されています。また、Madinah Groupの投資関連ページには、グループの売上高が月3億円以上と記載されています。単純に12か月で計算すれば年間36億円以上となります。
デニ氏の経営を理解するうえで特に重要なのが、「7WD(7 Ways Ala Deni:デニ流・7つの方法)」と呼ばれる考え方です。Madinah Groupでは、これを「7 Disiplin Budaya Eksekusi」、つまり「7つの実行文化」と位置づけています。デニ氏が重視しているのは、単に「夢を持ちましょう」「成功を信じましょう」といった精神論ではありません。大切なのは、目標を具体的な行動に落とし込み、その行動を数字で測定し、結果を見える化し、チームで継続的に改善することです。
| 7WD(デニ流・7つの方法) | 日本語での意味 |
| 1. Main Goal | 最重要目標を明確にする |
| 2. Measured Activity | 活動を数値化・測定する |
| 3. Scoreboard | 結果を見える化する |
| 4. Regular Meeting | 定期的に確認・改善する |
| 5. Team Building | チームを作る |
| 6. Time Management | 時間を管理する |
| 7. Reward & Punishment | 成果に応じて評価する |
これは単なる「成功哲学」ではなく、目標 → 行動 → 数値 → 見える化 → 会議 → チーム → 時間 → 評価という、実務的な実行管理の体系になっています。
デニ氏の考え方は、何をするかよりも「決めたことをどう実行させるか」に重点があります。
Main Goal 具体的な目標値:「売上を増やす」だけでは不十分
Measured Activity「営業コンタクトを毎日30件」
Scoreboard「30件中、何件接触・何件商談・何件成約したか」
Regular Meeting「毎週数字を確認」
Team Building「誰がどの役割を担当するか」
Time Management「営業活動の時間を確保」
Reward & Punishment「成果に応じて評価」という流れ
7WDでは、Main Goal、最も重要な目標を明確にします。Measured Activityによって、目標達成のために必要な活動を具体的な数字に置き換えます。Scoreboardによって、その活動や結果を誰が見ても分かる形にします。そのうえでRegular Meetingを行ない、実績を確認し、問題を発見し、改善策を決めます。そしてTeam Buildingによって、個人の努力だけではなくチームとして目標を達成する体制を作ります。Time Managementによって重要な仕事に時間を配分し、Reward & Punishmentによって成果や責任を評価します。
この考え方の特徴は、「目標」と「結果」の間にあるプロセスを非常に重視している点にあります。例えば「売上を増やしたい」という目標だけでは、社員が明日何をすべきか分かりません。しかし「毎日30件の営業活動をする」「そのうち何件が商談につながったかを記録する」「毎週結果を確認する」と具体化すれば、目標は実行可能な行動へと変わります。デニ氏の経営思想では、成功とは偶然起こるものではなく、明確な目標と測定可能な行動を積み重ねることで、再現性を高めていくものなのです。
興味深いのは、デニ氏がこの経営システムを自社の事業だけに利用しているわけではないことです。PT Madinah Sistem Manajemen Bisnis、いわゆるPerformate.idのような経営管理分野の事業を通じて、組織や中小企業に対して、経営戦略、デジタル化、パフォーマンス管理などの仕組みを提供しています。自分自身が事業を運営する中で得た経験を体系化し、それを他の企業にも提供するという循環が生まれているのです。
デニ氏の事業活動の中でも注目されるのがMFlashです。MFlashはスマートフォンやノートパソコンの修理、アクセサリー販売、新品・中古スマートフォン、通信サービスなどを扱う事業で、2019年にスタートしました。スマートフォンは現在のインドネシア社会において生活や仕事に欠かせない存在であり、販売だけではなく修理やアフターサービスまで含めたエコシステムを構築することで、顧客との継続的な関係を作ることができます。2026年には、不動産会社との間でデバイス・通信ソリューションに関する協力も進めており、通信・デバイス事業と他分野を結びつける動きも見られます。
デニ氏を単なる成功した実業家として見るだけでは、その活動の全体像を十分に理解することはできません。彼の経営思想の根底には、イスラームの価値観が置かれています。Madinah Groupの企業理念では、タウヒード(Tauhid:アッラーの唯一性)、アフラーク(Akhlak:人格・道徳)、アマーナ(Amanah:信頼)といった概念が重要な位置を占めています。事業を成功させることだけが目的なのではなく、アッラーへの信仰を基礎として、正しい倫理観を持ち、責任を果たし、他者に対して誠実に仕事をすることが重視されているのです。
この点は、イスラームにおける「仕事」や「財産」の考え方とも深く関係しています。イスラームでは、財産そのものが悪いのではなく、それをどのように得て、どのように管理し、どのように使うかが重要になります。自分自身と家族を支えるために働き、事業を成長させ、さらにその利益や能力を社会のために活用するという考え方は、デニ氏の活動にも見ることができます。
そのため、デニ氏の活動には社会事業も含まれています。Yayasan Madinah Peduli Umatなどを通じて、教育、マスジド建設、孤児や困窮者への支援、ムスリム社会のエンパワーメントなどに取り組んでいます。ここでは、ビジネスと社会貢献が完全に別々のものとして存在しているのではなく、事業によって生み出された資源や人材、ネットワークを社会のために活用するという発想が見られます。
また、デニ氏はインドネシアのムスリム起業家ネットワークであるKPMI(Komunitas Pengusaha Muslim Indonesia)でも活動してきました。KPMIはムスリムの起業家同士をつなぎ、ビジネス教育やネットワーク形成を行なう組織です。デニ氏はその活動の中で、国内外のムスリム起業家との交流にも関わっており、イスラームを共通の価値観としながら、国境を越えてビジネスや社会活動をつなげようとしています。
デニ氏の歩みをまとめると、その特徴は「小さく始めること」「行動を数字にすること」「仕組みを作ること」「チームで実行すること」「事業を成長させること」、そして「その力を社会に還元すること」にあります。高校生時代の小さな商売から始まり、通信事業、スマートフォン事業、修理事業、経営管理システムへと展開し、さらに教育や社会貢献へと活動を広げています。
特に興味深いのは、デニ氏の考え方が「思考」だけで終わらず、「行動」と「管理」にまで落とし込まれていることです。「こうなりたい」と考えるだけではなく、具体的な目標を設定し、そのために何を何回行なうのかを決め、結果を数字で確認し、改善を繰り返します。その意味で7WDは、成功哲学というよりも、目標を現実の結果へ変換するための実行システムと見ることができます。
事業の土台にタウヒード(Tauhid:アッラーの唯一性)とアフラーク(Akhlak:人格・道徳)を置くことで、ビジネスを単なる利益獲得の手段ではなく、人生の目的や社会への貢献と結びつけようとしています。これは、「お金を稼ぐこと」と「人を助けること」を対立させるのではなく、健全な事業を通じて収入を生み、その収入や事業の力をさらに社会のために使うという循環です。
デニ氏の人生と経営を一言で表すなら、「小さな一歩を、仕組みによって大きな社会的インパクトへ変えていくムスリム実業家」と表現できます。彼の7WDとイスラーム的な価値観を組み合わせて考えると、目標を持つこと、行動すること、収入を増やすこと、財産を管理すること、継続的な収入を生み出すこと、そして最終的に社会へ貢献することは、一つの連続した流れとして捉えることができます。そこにデニ氏の経営哲学の大きな特徴があります。


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